常識なんて存在しない―。
心地よい空間と生きる。【後編】
後編では、藤野さんの苦労や葛藤、そしてこれから目指すものについて伺いたいと思います。
サンパティーは《個》であり、《集》でもある。
「村」として大切にすべきこととは?
全てが順風満帆のように思えた、サンパティーに変化が訪れたのは、2019年1月のこと。オープンから4年が経とうとしていたころでした。
サンパティーには3棟のトレーラーハウスと藤野さんの自宅、そして平屋建てのテナントが軒を連ねていました。その全てがずっと埋まっている状態だったのですが、その年、平屋建てのテナントが空くこととなり、何をするか考えた末、夢を目指す人を応援する想いから、当時県内ではまだ珍しかったシェアカフェを始めることにしたといいます。
「それからの1年は本当に大変でした。サンパティーは一軒一軒は独立した店舗ではあるものの、サンパティーの住人のような形で定期的にミーティングをしていました。どうやったらサンパティーが心地よい状態を維持できるか、共有し合える関係を築いてきましたが、シェアカフェが始まり、出入りする住人が増えたことにより、小さな歪が生まれ始めたのです。心地よい空間にしたいと思っているのに上手くいかない。関わった人たちが悪かったわけではなく、たまたま波長が合わなかっただけだと思い、最終的にシェアカフェは断念することになったんです。」
サンパティーの名前の通り、“共感”し合える関係性を大切にしたいと行動を起こす藤野さんですが、この時のシェアカフェは断念するものの、《夢を目指す人を応援したい》という想いは断念していなかったのです。
夢は諦めない。
前向きな行動を起こし続ける。
シェアカフェを断念した翌年2021年。再び転機が訪れます。
それまでトレーラーハウスで営業していたスイーツ店のFRUCRUさんが平屋建てのテナントへ移転しました。空いたトレーラーハウスを活用するために藤野さんが行動したのはシェアカフェへの再挑戦だったのです。
「働きながら、一日だけでもカフェに挑戦したい、といった女性の想いを応援したいと思っています。ただ前回の経験があるので今回は事前の面接を大切にしています。その時に伝えているのは、ネガティブな感情を持たないように…ということ。夢を叶えるためのわくわくする気持ちや楽しむ気持ちを崩さないでほしいのです。例えば、“お客様が来なかったらどうしよう” なんてネガティブなことを考えているうちは絶対にお客様はこないと思うんです。だからこそ自分を信じてワクワクし続けていてほしい、という私の想いを伝えています。」
シェアハウスを断念した経験を聞いた時には、その経験にさぞ胸を痛めているんだろうと思ったものの、藤野さんの夢への力はそんな軽いものではないと衝撃を受けました。
続けて藤野さんは
「私は大家になりたくてサンパティーを始めたわけじゃない。一緒に夢を叶えるためにサンパティーを作ったんです。」
と話してくれました。
私は私、あなたはあなた。
認め合える心地よい世界を目指す。
多くの女性は子育てをきっかけに人生がリスタートするような心地になるもの。
藤野さんも子育て時期には我慢と将来への不安があったと話してくれました。
でも、これじゃ嫌だ、人生楽しみたい、ジブンらしくありたい。そう思う強い気持ちが人生を大きく変える力になることもある、と藤野さんの行動力を見て実感するのです。
そんな藤野さんは現在「メンタルコンサルティング」の勉強をしているとのこと。近いうちに資格を取得し、その活動も始める計画だといいます。
「その時代、その世代によって “常識” って変化するものだと思いますが、私はそういった常識にとらわれることなく生きていたいなぁと思います。私は私でそのとき思うこと、感じることを大切にして行動したいし、相手には相手の思い描くものがあると思います。自分と相手の世界観にギャップがあると、ついついそれを攻撃してしまう人もいますが、それよりお互いを認め合うほうが絶対にずっと気持ちはラクであれると思うんです。みんながそうあればきっと争いはなくなるし、自然と心地よい空間が出来上がっていくもの。今サンパティーではそれが出来上がりつつあるので、次はここより多くの人たちに向けて、この価値を発信して、お互いを認め合える心地よい世界を作っていく、それが次の私の夢です。」
と話してくれました。
心地よい世界を作っていきたい―。
驚くほど壮大な夢にびっくりするものの、強い共感とわくわく感を感じさせられました。サンパティーに込められた《共感》の意味。その大切さ。力。それらを再認識させてくれる藤野さんのインタビューでした。