縁もゆかりもない⼟地で⾒つけた
私らしい⽣き⽅【後編】
子どもたちに「ふるさと」を。
富山への永住を決意。
昼逃げを段階的に実行する中、澤井さんは2017年1月に開業届を提出します。
「芸能」「演劇」といった“魅せる”ことに触れ続けていたい…、とはいえ子どもたちを育てながらできることを…、そう考えて始めた「ハイヒールウォーキング」のレッスンが徐々に軌道に乗り始めていたこともあり、起業することを決心した瞬間でした。
翌年に離婚。地元へ帰る、という選択肢もあったはずのところをそのまま「富山に永住すること」を決めたというのです。
「富山永住には2つの理由がありました。1つは私が起業して作り上げたいものが富山でならできそうと思えたからです。芸能に関する事業は、都会だとライバルも多いと思います。しかし、ここでなら舞台・ショー・ウォーキングレッスン・司会など多種多様なことにマルチに対応できるのは私くらいかもしれないと思えます。富山でなら好きなことを仕事にできると思えました。もう1つは、子どもたちに“ふるさと”を作ってあげたい、という想いからです。私には、ふるさとと思える場所がありません(転勤族だったため)。子ども達が将来どこでどう生活するかはまだ想像もできませんが、どこでどうなっても”戻ることができる場所“を作ってあげたい、そう考えています。富山の人って、誠実で健康的で、しかも働き者で…この土地でよい出会いに恵まれてくれたら尚嬉しいなぁ(笑)なんて親としては思ったりもしています。」
こうして、富山の地で「私らしく生きる」ことをリスタートするのでした。
初めて気づく
自分自身の得意なこと
ウォーキングレッスン、マナー研修、司会にショー演出…、なんでもドンっと私にお任せあれ!と思うものの、思うように仕事はやってきません。「“これはいける!”と思ってもニーズがなくて…、それでは仕事にならないんだと痛感しました。これは食欲ない人にいくら美味しいものを勧めても意味がないのと同じで、それを一生懸命するよりも、相手に“美味しそう、それ食べたい!”って思ってもらえる状態を作ることが大事なんだと気づかされました。」
そこで、澤井さんは自分自身にできることと相手が望むものについて考えを重ねます。そんなある日、ウォーキングレッスンをしていると(良くなっているけど、この人はもっとこう魅せたほうが魅力が出そうだな)と考えていることに気付きます。そして、司会の仕事の途中では(あ、あのゲスト、衣装がちょっと崩れてるのにどうして誰も気づかないんだろう)と些細なことに気付く自分がいることにも気づきます。
そんな自分と向き合ったとき、「私は相手の魅力を引き出すのが特技かもしれない」と思うようになります。そうして、この才能を確認するように【会いたくなるプロフィール撮影会】を月1回ペース開催し始めたところ、これが好評を博し、澤井さんは自分の才能を確信するのでした。
いつでも凛と美しく。
そして魅力的な変態であれ!
自分自身の才能に気付いた澤井さんは、その後仕事の幅を広げ2021年4月には合同会社アナタラシックを設立します。2人の子ども達も小学生になり、それまでよりも家庭とのバランスがとりやすくなってきている様子。そんな子ども達を見て、澤井さんは「“俺のお母さん、かっこいい!”って自慢に思える、そんな母親でいたいと常々思っています。」と話してくれました。それは、どんな場面であれ凛として、美しくあること。そのためには、「私にしかできない私らしい仕事をすること」が欠かせないといいます。
自己アピールが苦手だった自分自身のことも、今では子ども達の存在のおかげで克服できたと話し、これまでは「自己アピール=ダサい」とまで思っていたそうですが、今では夢を掴むためには、ぐいぐいと前に出ていかなきゃ!と行動しているそうです。
「“出る杭は打たれる”と言いますが、実際、私自身その経験があるので、ついついストッパーをかけてしまう癖があります。けど、子ども達にはそうならないでほしい、と思うのです。自分の思っていることをちゃんと表現できる、自分の得意なことをちゃんと発言できる子になって欲しい、だからこそ私自身が変わって、子ども達にその姿を示していきたいと思います。」
最後に、「澤井さんが私らしくいられるようになったのは何故?」と尋ねると、それは“人生のどん底まで知ったから”じゃないかと話してくれました。
今回記事の中では伏せましたが、澤井さんの人生は確かに波乱万丈。そんな澤井さんは、「みんなそれぞれ自分が輝けるものを持っている。やりたいと思っていても、それがジブンには向いてなかったり、ニーズがなかったりすることもあると思います。でも自分を信じて挑戦してほしいなって思いますね。私でも掴めたので、なんなら“澤井にできるなら私だって!”と奮起してもらえたら嬉しいです。」と話し、「大切なのは【熱狂できることを仕事にすること】、熱狂できることを変態レベルで突き抜けていく―。プロを目指すことより変態を目指した結果、周りが“プロ精神を感じる”って思ってくれれば、しめしめ…(にやり)、ですよね(笑)。」